レプソル・ホンダチーム2021

-NSR500とRC213V〜チャンピオンの中のチャンピオン-

レプソル・ホンダチームはレースで多くの勝利とタイトルを獲得しましたが、中でもそれぞれ5回と6回のタイトルを獲得したNSR500とRC213Vがあります。

1995年、レプソル・ホンダチームはミック・ドゥーハン、アレックス・クリビーレ、伊藤真一の3人のライダーを擁し、NSR500で最高峰クラスへの参戦を始めました。NSR500は、チャンピオンマシンNS500の系譜を継ぐ形で1984年に生まれました。レプソル・ホンダチームで5度のタイトルを獲得(4回はミック・ドゥーハン、もう1回はアレックス・クリビーレ)しました。
最近では2012年にホンダは、6回のタイトルを獲得することになる最新世代のRC213Vを発表しました。この6回のタイトルはいずれもマルク・マルケスによりもたらされました。
2台は間違いなく最高レベルのバイクですが、どんな違いがあるでしょうか?

【NSR500とRC213Vの違い】

●エンジン
バイクの心臓部であるエンジン。NSR500とRC213VはV4エンジン、水冷、6速トランスミッションを搭載しています。2つのバイクは基本的には共通しています。NSR500は、112°V型4シリンダー2ストロークエンジン499ccです。1995年エンジンは12000回転、190馬力を誇りました。数年前に開発された電子噴射システムを採用していましたが、インテークは最終的に39mmのキャブレターでした。
RC213Vエンジンは、4ストローク4シリンダー1000ccで、90°V型エンジンです。このエンジンは17000回転、250バイリキ以上を発揮します。噴射システムはひじょうに効率的で、空気圧バルブシステムを使用し、最大のパフォーマンスを引き出します。
両バイクとも、ギアの数は6速で同じですが、ギアボックスの動きが違います。NSR500は従来のギアボックスで、その後クイックシフターと組み合わせて、ライダーがスロットルを離したり、クラッチを入れたりすることなくスピードを上げることができました。ただし、減速時はそうではありませんでした。
それに対し、RC213Vはシームレス・ギアボックスを採用し、その独創的なデザインと電子機器のおかげで、クラッチなしでアクセルを離さずにシフトアップ/ダウンができます。クラッチはスタートラインでのみ必要とします。
両バイクとも、レースで最も良く知られている2つの点火順序、スクリーマーとビッグバンを持ち、状況に応じてエンジンへの電力供給をスムーズにしたり、パフォーマンスを向上させます。

●シャーシとサスペンション
シャーシは、バイクの全ての部品を支える構造です。エンジン、フォーク、リアスイングアーム、シート、パネルはシャーシに支えられています。すべてのコンポーネントによって発生する力とバイクの動きがトルクを生み出し、複数の方向に広がります。そのため、シャーシはバイクデザインの重要な部分の一つになっています。
1995年式NSR500はHRCが開発したダブルビーム・アルミシャーシを採用しています。エンジンは2本のビームの間にあり、スイングアームはアルミ製です。
RC213Vは、ルーツに忠実で、同じシャーシタイプを維持しながら、同じものを完全に再設計し、直線での安定性と急な傾斜のあるカーブでの動きに最適なバランスを実現しています。
サスペンションもとてもよく似たレイアウトになっています。NSR500は、ショーワ製倒立フォークとショック付リアプロリンクシステムを装備し、どちらも調整可能で、アルミ製です。RC213Vは、実質的に同じ構成ですが、オーリンズ製で、フォクカートリッジとリアスイングアームにカーボンファイバーが含まれています。

●タイヤとブレーキ
NSR500とRC213Vは同じサイズのリム(17インチ。ただし数年前まではモトGPでは16.5インチを使用)です。実際に変わったのはタイヤの技術です。今日のタイヤははるかに高品質で、はるかに優れた性能を発揮し、より極端な角度や傾斜で機能できるものです。
今は22本のタイヤがドライセッション用にライダーごと、GPごとに供給されます。これは年間400本以上のタイヤですが、1995年にはシーズンごとに少なくても500本以上が割り当てられていました。
ブレーキは1995年には早くもNSR500に320mmのカーボンブレーキが装備されていました。RC213Vもカーボン製ディスクが装備されていますが、より近代的になり、重要と厚みが増減するバリエーションを備えました。さらに現在のレギュレーションでは、もてぎでの使用が義務づけられているものを除いて、全てのサーキットで320mmと340mmのディスクを使用することが認められています。RC213Vの現在のカーボンブレーキの最大のメリットの一つは、数年前までは考えられなかった雨や寒さの中で使用できることです。

●エアロダイナミクス
RC213Vで最も際立っている側面の一つに、フェアリングの形状があります。NSR500には見られなかった付属品や形状が見られます。最近までバイクのラインは、クリーンで90年代のものと似ていましたが、ここ10年以内に空気力学の面で革命が起き始めました。今日のバイクには、コーナリング時にフロントエンドで空力サポートを生成できるように特別に設計された曲面があります。これにより、ウイリーを最小限に抑え、リアブレーキをかけることができるようにすることで、エンジンパワーをさらに活かすことができるようになりました。
また、バイクのサイズはとても似ています。NSR500は1950mm、ホイールベースは1350mmでしたが、RC213Vはやや大きめで、長さ2050mm、ホイールベース1435mmです。高さもRC213Vがわずかに高く、NSR500が1080mmに対し、RC213Vは1110mmです。小さな違いですが、空気力学がなければ、バイクのパフォーマンスに大きなハンディとなる可能性のあるものです。

●電子制御
1995年、バイクはすでにパフォーマンス改善のため電子機器を備えていました。排気バルブやプログラム化された電子点火のようなコンポーネントはすでに備わっていましたが、ライダーのスキルとエンジン形状により、エンジンの最良の電力供給を調製するものでした。
2002年からモトGP、4ストロークエンジンになり、電子機器ははるかに重要になり、近年役割は増加しています。
RC213Vは、ダンピングの位置、空気圧バルブ圧、バイクの傾斜や加速度のチェックなど、数十種類のセンサーがあります。このすべての電子機器は、毎秒多くの計算を実行できる高度な制御ユニットと通信して、状況の必要性とハンドルバーからオプションを制御するライダーの希望をベースにバイクのパフォーマンスを最適化しています。
この電子機器の助けがなければ、実質的にNSR500より手に負えないものになるでしょう。

●コースでのパフォーマンス
今日の電子機器やマグネシウムのような軽量素材、カーボンファイバーのような新素材などの技術的進歩により、バイクは初期に比べて数秒速いラップタイムを達成しています。
改善されただけではなく、ライダーが全開でほぼ同じラップで周回をしても消費量は同様に減少しました。NSR500は32リットルタンクでしたが、RC213Vは22リットルタンクです。
最高速度は上がりました。NSR500は320km近くでしたが、RC213Vは350km越えです。
2ストロークのNSR500の重量は130kgでしたが、現在のレプソル・ホンダチームのRC213Vは規制に従い、少なくても157kgの重量が必要です。
最先端の電子機器とエンジンにより、RC213VはNSR500をはるかに上回るバイクになっています。しかし、これらの違いは何十年にもわたる進化の結果です。

どちらのバイクもレース界の分岐点であり、多くのすばらしい記憶を残してくれましたし、これからもそうし続けるでしょう。

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